昭和十一年、山梨の片田舎。
少年・義彦は親戚の家で偶然、一冊の英語の雑誌を見付ける。そこに広がっていたのは、見たことのない華やかで自由な世界だった。
やがて独学で英語の勉強を始めた義彦は、米国へ行くことを夢見るようになるが、はからずも時代は米国との全面戦争へ突入しようとしていた。
英語は禁止。ドルは違法。徴兵され、体を壊し、無一文になって戦後を生き抜く義彦の手にただひとつ残されたもの――それはかつて覚えた英語だった。
まだ米国が月よりも遠かった時代、
夢を追いかけた昭和の青年の、
真実と奇跡の物語。
1922年、山梨県生まれ。慶應義塾大学を卒業後、渡米。帰国後、山口県下関市の梅光学院大学に88歳まで現役の教授として勤め、のべ1000人以上の若者を海外留学へ送り出した。2015年、本書の初稿を書き終えた直後、東京都清瀬市の病院で息を引き取る。享年92。論文は多く執筆しているが、本作は初の小説作品である。妻は同じく梅光学院大学教授で、ベストセラー『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』(幻冬舎刊)の著者である向山淳子。
2017年8月31日、幻冬舎より発売。購入はこちらから