発音やリスニングの本を出してもらえないでしょうか?「聞く」ことを中心とする学習方法はだめなのでしょうか?
これはとても難しい問題で、答えるのもすごく大変です。もちろんネイティヴスピーカーの声優さんに書籍中の英語を全文読んでもらって、それを収録したCDを発売するというだけなら簡単です。ただ、それだけでお金をもらうのは、個人的に良心の呵責を感じずに入られません。確かに読み方は分かるかも知れませんが、おそらく読者の英語力を伸ばすという意味ではほぼ無意味に近い商品になってしまうように思えるからです。本の中の例文は目で見て読むことに最適化してあるもので、発音の勉強を前提に書かれていません。もし耳から聞き取ることを主体にしたCDを作るなら、まったく新しい本を一から作り直す必要があると思います。
しかし、本の製作過程でぼくらは読むこと、聞くことのいずれがより大切なのか――いずれを中心として本を作るべきなのか、迷った結果、第二言語の学習方法としては「聞く」ことはどこまでいっても「読む」ことの延長線上にあるという結論に達してから、作業を開始しました。
聞くことを重要視して、やがて読むことを取り入れていくという方法論もあると思います。現実にそういったテキストも発売されています。それを否定するつもりは毛頭ありません。耳から憶える方を得意とする方もいるのではないかと思います。ぼくらが「読む」ことを主体に選択したのは、スタッフ全員が英語を勉強する際に「読む」ことの影響が最重要であったこと、さらにはぼくを初め、かなり数多くの人が音を主体にした学習方法での挫折経験があることでした。
英語教育は方法論の戦争ではありません。方法がこの本のやり方であれ、リスニング主体であれ、英会話教室であれ、英語ができるようになれば、それでいいと思います。
ぼくは漫画から英語を習いました。父は戦前の自己学習とGHQの通 訳をすることで英語を憶えました。母は大学の授業を通して習いました。妹は正規の日本の英語教育をいっしょうけんめいやって、塾の英語講師になっています。四人家族の中でさえ憶え方がばらばらなのですから、絶対に統一したやり方があるとはぼくには思えません。ぼくらが出した本はただ、ぼくらがベストだと信じるやり方、ぼくらの周りで英語が「できる」人が皆、賛同してくれたやり方に過ぎません。たまたまそれが読むことだっただけです。
もしリスニングやヒアリングの本を出してしまうと、それは線路を二本引いて一台の列車を走らせることになってしまいます。ただでさえレールの多い今の日本の英語教育市場では、それは読者の方を余計に混乱させてしまうことになると思います。方法はどれでもかまわないので、自分に合っているというものを見つけたならば、それを続けることが最良の方法だと思います。出版社に怒られてしまいますが、別
にその方法がBFCの方法でなくてもいいとも思います。
もしBFCの方法が最良であると思っていただけるなら、しつこいようですが、とにかく読んで下さい。たくさん読み続けてください。信じられないかもしれませんが、ヒアリングはあとからついてきます。
だから、ヒアリング専門の本は今後も出ないと思います。本当にごめんなさい。
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