英会話教室に通っているのですが、やめるべきでしょうか?
とんでもないです!
もしお金が十分にあって、通える時間もあるなら、せっかく英語を話す機会なのですから、辞める理由なんてどこにもありません。本の中で英会話教室を否定しているように捉えた方も多かったようですが、本の中で述べているのは、「お金がたくさんかかるので、無理していくことはない」という主旨の内容です。誤解を生んでしまったなら申しわけありません。本を買うお金があって、さらに英会話教室に行くお金もあるなら、それに越したことはないと思います。ただ、本を買うお金を英会話教室に回すのはいささか順番が間違っているようには思います。
英会話教室に行く場合に気をつけてほしいことがひとつあります。それは英会話教室で習ったセリフは誰かがどこかで書いたもので、それはその作者の言葉に過ぎず、それが決して万人に共通する言い方ではないということです。むしろ、たいていはあまりにも平易過ぎて、現実に使われることのない形だということ――「標準」として紹介される例文もまた、ひとつの例に過ぎません。
外国人のための日本語会話教室に行って、例文を見ればすぐに分かりますが、例えば愛の告白をするのに習うのは「私はあなたを愛しています」というフレーズです。これがI love you.として紹介されています。確かに意味は通じますが、日本人の女性にこれを大まじめで言ったなら、その外国人の男性はたぶん笑われて「冗談言わないで」と言い返される可能性が高いでしょう。少なくてもぼくは今までの人生で、そう告白したことはありません。――言葉は絶えず、それ単体で存在しているのではなく、その背後に存在する国の文化や思想を背負っています。言葉単体で習っても、その言葉が持つ意味の全ては理解できません。このため、文化やニュアンスも同時に吸収できる「物語」という形が学ぶのにはベストです。日本語で「I love you.」をうまく言うためには、優れた恋愛小説や恋愛漫画を読むのが一番です。そういった意味で英会話教室は「練習の場」としての価値はありますが、「学ぶ場所」としてみると、多少不具合が出てきます。
しゃべることや書くことの「アウトプット」は読むこととは違い、応用力と絶対知識量 がもっとも必要な言語使用の最終形態です。たくさんの英語の本、映画、会話、その他を数数えられないほどに見て、聞いて、その中で気に入った表現を探し出し、ひとつにつなげて自分だけの言葉体系、自分だけのしゃべり方を完成させてから、始めて実用化できるものです。英会話教室の例文はそういった無数の「例文」の中のひとつの選択肢として受け止める分にはなんの害もありません。ただ、そうしゃべらないと間違い、一語でも変わればおかしいとは思わないでください。そういうしゃべり方をしている人もきっとどこかにはいますから。
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