パイポ

再始動、少しずつ。

お久しぶりです。studio ET CETERAの猫蔵です。

本当に、申し訳ないくらい更新が滞っておりました。前回の更新からなんと三年。青少年なら、軽くひとつ学校を卒業できる年月です。

昔であればこういう時、何があったか——というと、意外と何も起きていませんでした。三年ぶりに、友達から年賀状の返事が来たとしたら、たいてい同じ名前で、同じ住所で、一言こう書いてあったものです。

「変わりなくやっています」。

平和です。まあ、中には住所も名前も同じだけれど、「実は名字が二回変わって元に戻りました」という人もいますが。

しかし、今回の三年は、そんな通常の三年とはまったく違うものでした。

その間にコロナが流行し、マスク姿が当たり前になり、我らが代表(兼雑用係)である向山”テディ”貴彦の愛したタピオカ屋も、外での飲食が減少した関係か下火になり……代わりに、何トッツォとかいうイタリア式の生クリームハンバーガーが幅を利かせてきました。これに関しては、そのうち「甘くないトッツォ」「めしトッツォ」などが出て、そのうち野菜が挟まれ、肉が挟まれ、一周回ってハンバーガーに進化するんじゃないかという気さえしています。

嘆かわしいことですが、これも時代の変化と受け入れる他ないのかもしれません。それほど、ここ数年で世界の状況は大きく変わりました。海外はおろか、近所のファミレスさえ出かけることをためらう日々がくるなど、誰が考えたことでしょう。

私どもの方でも、ただ悲しみに暮れていた当初から、数年の間にいろいろと考えることがありました。そして、悲しみは変わらずあるけれども、その上でやはり大きくスタッフの気持ちにあったのが、「向山の作品を残したい」という強い想いでした。

向山の作品——当然、書籍化されているものはたくさんあります。

でもそれ以上に、彼は多くのものを残して逝きました。具体的に言うと、無印良品のハードボックス三十個分くらいの量の下書きや、資料や、落書きのマンガや、小説のアイデアや、友達をからかうために作ったポストカードなどです。それらは作家として以上に、話し手として、遊び仲間として、またはただ単に人生を語る相手として、彼がこれ以上ないほど面白い人間だった、ということの証拠です。(現代では、これを一言で言う便利な言葉が流行しています。「やばい」です)

書籍化されているものには、多くの方々のお力をお借りして、彼の完成した「作品」を収めることはできました。でも、リアルな「人生」の部分は、残念ながらあまり収められなかった。でもその誰よりきらめく人生の部分こそ、彼の彼たる部分であり、「向山貴彦」を唯一無二にしている部分であると、私たちは考えております。

そんな彼の残した資料や、書きかけの原稿、或いはネットに掲載したけれど、今は読めなくなってしまったエッセイなどが、スタジオにはたくさん保存されています。正直、最初の数年は見ることさえできませんでしたが、やっと少しずつ整理できる余裕が生まれて参りました。

これから、少しずつ、書き残したものなど、みなさまのお手に届けられたらと思います。

どうか、少しでもみなさまの人生に温かい力になりますように。

2022年2月 猫蔵拝

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