「絶叫仮面」「ほたるの群れ」などの音楽でお世話になっている北海道の音楽スタジオ「oo39.com」の新作ミニアルバム「TRAILERS 01」が本日より配信開始! これは前作「こわい」「こわい2」の「ホラー映画っぽいBGM集」に続いての「フェイクサントラシリーズ」第三弾。
ぼくは映画の予告編が大好きで、いつもネットで最新の予告編を漁っているのですが、oo39.comではそんなぼくのような人に向けて、なんと「予告編」だけの音楽集を作成。聴いただけでいつでも予告編を見ている気分になれる変なシリーズです。今回は数ある予告編の中でも「SF映画の予告編っぽい音楽集」!
最初の「配給会社のテロップっぽい音楽」から「ドルビーサラウンドっぽい音楽」を経て、「派手なヒーローアクション映画っぽい予告編」「悲劇性のあるカタストロフィー映画っぽい予告編」そして「SFスリラー映画っぽい予告編」と続きます。どれも聴けば「あるあるー」と手を打つものばかり。
ダウンロードしての使用は有料ですが、サイトで聴く分には無料ですべて聴けますのでどうぞお気軽にこちらまで。聴いている間は目を閉じて、自分だけの映画を空想してみて下さい。
尚、今回各曲に映画っぽいタイトルを英語でつけてほしいというoo39からのリクエストに応えて、僭越ながら曲のタイトルをぼくがつけさせてもらいました。その際に曲を聴きながら目を閉じて、ぼくがイメージしていたのは以下のような映画でした。(下の空白部分を反転させることで表示されます。できれば先に聴いてから読んでください。)
さて、あなたはどんな映画をイメージしましたか?
以下、文字色反転で読めます:
WARLORD
SFパンクアクション。西暦3022年。宇宙へ進出した人類は火星近郊の空域に「ボード・オブ・ウォー」と呼ばれる巨大な闘技場を浮かべた。そこでは超硬質のガラス壁によって区切られたチェス盤上のマス目に、辺境から集められてきた宇宙生物がチェスの駒として格納されている。この駒を操る人間はウォーロード(戦神)と呼ばれ、自らもキングの位置に入って戦う。「バトルチェス」と名付けられたこの残酷なショーは多くの空域から観客を集めて、連日大盛況を極めていた。
巨大企業「エウルプラン」に勤めるコンピュータエンジニア、バーナス=アルコットは企業の不正隠蔽の謀略に巻き込まれ、エウルプランがスポンサーを務める「バトルチェス」にウォーロードとして登録されてしまう。決戦まではわずか三日。バーナスは生き残るために手駒七人となる仲間を集めなければならないが、手を貸してくれるのは元死刑囚の宇宙海賊・ウェグペグや「銀河系一のビッチ」女戦士シャラキー=ピスパワーなど、危険なメンバーばかり。果たしてバーナスは究極のチェスを勝ち抜き、真のウォーロードとなれるのか?
Silent Answer
人類が神に祈りを捧げて数千年——。
計画性のない宇宙開発の影響で地球周辺域は大量のスペースデブリ(宇宙ごみ)に覆われていた。宇宙開発新世紀を記念する年明け、偶然起きたデブリの連続衝突によって、月面のスペースステーション「アンサー」の巨大融合炉が爆発し、ステーションの乗組員の大半を死に至らしめてしまう。しかし、悲劇はそれだけでは終わらなかった。月面から乖離し、地球へと落下を始めた「アンサー」を迎撃する方法はなく、四十八時間後に迫る衝突で、地球は滅亡の危機に瀕する。唯一の望みは融合炉を切り離し、大気圏外に放出することだったが、それができるのはステーション内に残っている三人の人間だけ。しかも、ステーション内部で生き残っていたのは、たまたまステーションの見学に来ていた学生二人と初老の検査技師だった——。
人類数千年の祈りに対する神の≪サイレント・アンサー(静かなる答え)≫が近付く中、わずかな希望の糸に縋る人類の挑戦が始まる。
Destiny: BEYOND
最愛の妹を事故で失ったレイク=フリードマンは、もう一度だけ妹と話したい一心から未知のプロジェクトBEYONDに参加する。「死語の世界」は実在するという仮説に基づき、体液を特殊な冷却液に置換して、仮死状態のまま生きている人間を死語の世界へ送り込む「クライオニック・アクセレーター」——その試作機がついに試験段階に突入した。妹との再会を夢見て、危険な装置に搭乗することを志願したレイク。しかし、レイクを待っていたのは想像を絶する「死」の真実との直面だった。
一方、レイクの同僚・メイスンは過去の事故の忌まわしい秘密が明るみに出ることを恐れ、妹との再開を阻止しようと、もうひとつの試作機でレイクのあとを追う。
二転三転するストーリーが行き着く衝撃の結末とは——!?
「オイルヒーターと醤油のパック」
長い間生きていると、たまにあり得ない出来事に遭遇する。今日はある冬の寒い日、ぼくの身の上に起きた、ちょっと奇妙な出来事を紹介したい。
その日の昼、ぼくは近くの某パック寿司専門店でランチのお得パックを買って、家で食べているところだった。寿司という割には軍艦巻きにコーンが乗っていたり、にぎり寿司のネタがハムだったり、なかなか斬新なラインアップのパックだったが、このジャンクな感じが気に入っているので、特に文句もなくおいしくいただいた。問題は寿司ネタではない。たとえエビが見たことがないほど薄くても、イカでもたこでもない第三の軟体海洋生物が含まれていても、それは問題ではなかった。――問題はここの醤油パックなのだ。
いい加減ぼくも塩分を控えなくてはならない。そのため、最近はいつも少なめに醤油をかけるようにしていて、パックの中の醤油が使い切れないことが多い。しかし、どうもこの国ではパックの醤油というのは使い切るのが当たり前らしく、使い切れなかった醤油のパックを食べている間どうするのか、ということに対して、誰も論議の必要性を感じていないようだ。こうしてこれを打っていても、全国のどこかにある「使いにくい形をした醤油のビニールパックを作る会社」の製作担当部署での上司と部下の会話が聞こえてくる気がする。
部下「部長、このパック、醤油が中に残っていると、立てることも寝かせることもできません。ごみ箱に捨てたら、ごみ箱の内側が醤油まみれになってしまいます」
上司「そんなもん使い切ればいいだろ」
部下「しかし、みんなが使い切るわけじゃありません。現にぼくもこうして昼ご飯の醤油をまだ右手に持っています」
上司「そんなやつはおれが残った醤油を鼻から流し込んでやる」
部下「や、やめてください、部長! げふっげふっ!」
仕方ないので、裏返しにした蓋の端に醤油を斜めに立てかけておいたのだが、当初からとても怪しいポジションだとは思っていた。そうしてなんらかの魚だということ以外、あまり種類の分からない寿司ネタを食べていると、何かが喉につかえて、ふいに咳き込んだ。何がつかえたのかは分からないが、推測するならきっと寿司ネタのフリをしていけしゃあしゃあと軍艦巻きに乗っていたあのコーンだと思う。あいつはそういうことをしそうな気配があった。
で、咳き込んだはずみに膝が醤油をたてかけた蓋の角に当たり、蓋が斜めに跳ね上がった。ちょうど古代ギリシア時代に城門の攻略に用いられた投石機のような美しいアーチを描いて、醤油はぼくの目の前を舞った。この瞬間、誓って言うが、一瞬醤油のパックの動きがマトリクスのようにスローモーションで見えた。もしこれが3Dカメラで撮影されていたら、ぼくの頬のすぐ横を大迫力で回転しながらビニールの醤油パックがかすめていく映像に、観客はみんな身を逸らしていたはずだ。
醤油はきれいにソファの肘置きを飛び越え、その向こうにあるオイルヒーターに向かった。オイルヒーターというのは、あの白い金属のパネルが五、六枚縦に連なった、暖房器具である。分からない人のために最後に写真も載せておく。
このヒーターにまっすぐ向かった醤油のパックは何十分の一かの確立で、ちょうど二枚のパネルの間に飛び込んだ。そして、なんの因果か、反対側へ通り抜ける前にパネルとパネルの隙間のちょうどど真ん中——もっとも手が届きにくいところに残った醤油を全部ぶちまけてくれた。何しろ、パネルの間はものすごい高温である。じゅーっという音と共に部屋の中に一気に広がる焼けた醤油の臭い。これが驚くほどきつい臭いだった。百倍に濃縮したあられを両方の鼻に詰めて、口をガムテープで蓋されたような激しさで、目の裏まで醤油の臭いが染み込んでくる。
慌てて布巾で拭こうとしたものの、猛烈に熱いのでとても手を突っ込めない。醤油はちょうど真ん中あたりで垂直に流れていて、どちら側から拭くにせよ、思いっきり指先を中まで差し込まないと届かない位置だ。熱いだけじゃない。熱せられた醤油が猛烈な臭いで立ち上ってくる。すごく寒い冬の日だったが、やむなくオールヒーターの電源を落とした。しかし、オイルヒーターを使っている人なら分かると思うが、電源を切ったあとも丸三十分ぐらいオイルヒーターは熱を失わない。
外は氷点下の日だ。部屋はどんどん寒くなっていく。それなのに、ヒーターだけがなかなか冷たくならない。けっきょく寒さに震えながら、何度もヒーターに手を突っ込んでは「あちちっ!」と一人で怒って、その間もムンムンと香る醤油の臭いで気持ち悪くなっていた。——次の日以降も人が来る度に、「お、餅焼いた?」などと聞かれ、何度か説明しようと思ったが、あまりに馬鹿馬鹿しいので、今年の冬はスタジオではずっと餅を焼いていたことになっている。
よほど「使いにくい形をした醤油のビニールパックを作る会社」の製作担当部署に電話して苦情を言おうかと思ったが、たとえ言ったとしてもきっとこんな会話が会議の時に交わされるだけだと思ったので、やめておいた。
部下「部長! あの醤油の容器、やっぱり改良しないとまずいですよ! 見てください。こんな悲劇の投書が!」
上司「なんだ?」
部下「醤油をオイルヒーターの隙間にこぼして、一時間も醤油の悪臭で苦しんだ人がいるんです!」
上司「……」
部下「どっちからも布巾が届かなくて、部屋中が焼きすぎた餅みたいな香りに……あ、部長、何するんですか! やめてください! うわ、げふっげふっ!」
ウソみたいな話だが、誓って言うが、すべて本当である。どうしても信じられないのなら、うちの一階にすごく寒い冬の日に来てみるといい。そう。真ん中の下の方だけ、どちらからもどうしても届かないところがまだ少し残っているのだ。
【参考資料:オイルヒーター】