ほたるの群れ5・ライナーノーツ
【第一回「永児、スイカを買う」 2013年12月15日更新】
0/血の臭いver5
1/路地裏ver11
2/図書館のロビーver13
連載直前までシーン0は存在していなかった。初稿では0の内容は、シーン1に組み込まれていた。ところが連載数日前になって、いきなり独立したシーンとして書き換えたため、多くの修正が発生し、連載は一回目からギリギリの発進となる。
本来、峰と永児の路地裏のシーンは2シーン目だった。その前に阿坂の図書館でのシーンがあったのだが、これは土壇場でカットされた。このため、完成版では会長との河原のシーン(シーン25)まで、阿坂が図書館で何をしていたか、本当の理由は明かされないままとなっている(今回は特別に、巻末にこのカットされた幻の1シーン目を収録している。「ほたる」の多くのシーンには、こうした別バージョンが多数存在する)。
ちなみに冒頭の四行詩は、毎回初稿が終わった段階で、猫蔵が書いたいくつかのバージョンのひとつを選んで収録することになっている。今回は猫蔵が花火をテーマにしたため、後半花火の描写が大幅に増えた。
【第二回「喜多見、クレープを食べる」 2013年12月22日更新】
3/峰の家ver11
4/喜多見の休日ver15
喜多見と相沢たちがフードコートで話すシーン4は、当初、実際に水着を買うところまで書いていたが、とても長いシーンになったため、後半部分は「五倉山中学日記」の方で取り上げることにして、本編からはカットした。
【第三回「永児、請求書をもらう」 2013年12月29日更新】
5/永児と秋山ver11
6/踏切屋ver5
四巻と五巻の間の「五倉山中学日記」で、秋山はトモちゃんに髪を切られて坊主頭になっている。そのことをうっかり忘れて、初稿では永児が秋山の髪をひっぱる動作を書いていた。
【第四回「アズミ、アイスを落とす」 2014年1月5日更新】
7/蜘蛛の遺品ver12
8/窓の向こうver7
シーン8のタイトルがまったく内容と噛み合っていないのは、最終稿の直前まで、永児が窓の外をずっと見つめているシーンだったため。あまりにも静か過ぎるということで、ver5以降、母親のために階段を飛び降りて動くようになった。また、その流れで永児が台所で眠ることになったため、翌日から「寝不足になる」という新たな設定が加わることになる。
【第五回「喜多見、弓道着を着る」 2014年1月12日更新】
9/旅先ver9
10/塾に行く日ver10
9の方言は実際にこの地域出身の猫蔵が監修している。ただ、最初は老人の方言ということで極端になり過ぎて、作者のぼくも分からない内容になってしまい、最終バージョンではかなり弱めてある。
シーン10の弓道場では、当初は香坂が登場して喜多見と会うはずだったが、やはりシーンが長くなり過ぎるためにカットした。本来はこのシーンで香坂は豆乳を飲んでいたため、イラストには「豆乳のパックが好き」とあるのに、本編では豆乳が登場しないまま終わっている。六巻以降でぜひ飲ませたいところだ。
【第六回「永児、寝不足になる」 2014年1月19日更新】
11/線路沿いver12
12/永児と峰ver16
当初、シーン12で峰と永児は、峰の家の二階の屋根に登って、五倉山の町明かりを見ながら話すことになっていた。しかし、後半で登場する峰の家の玄関先の様子を見せたいため、ver10前後で舞台を家の正面に移動した。また、当初は普通に会話しているシーンだったが、永児が寝不足という設定が追加されたため、全体に茫漠とした印象のシーンとなっている。
【第七回「喜多見、手を合わせる」 2014年1月26日更新】
13/十四階ver12
14/稲荷の前ver10
15/捺印ver5
16/六組の思いver10
永児とアズミは初稿では稲荷の前で激しい戦闘を展開していた。しかし、打ち合わせの最中、「アズミに攻撃されても、永児は戦わないはずだ」という点で意見が一致し、さらには永児が寝不足という設定も加わったため、最終稿のようなシーンに変化を遂げた。
シーン13では、当初、静はまず喜多見を自分の部屋に招いて、お茶の点前を披露していた。喜多見が正式なお茶の作法を知らないために慌てるが、結局、静が出してくるお茶がインスタントという、コミカルなシーンだった。個人的に気に入っていたが、やはり「長すぎる」という理由でカットになる。その後もなんとか入れようとして「五倉山中学日記」の方のシナリオとして書いたが、これまたタイミングが合わず、掲載できる週がなくて、そのシナリオも結果的にボツとなる。
【第八回「永児、好きな人がばれる」 2014年2月2日更新】
17/合宿の引率ver9
18/書棚の片付けver10
初稿ではシーン18は存在しない。当初は永児たちは着いてすぐに海に向かっていたが、それを読んだ猫蔵の「世の中、そんなにうまく行くわけはない」という大人の意見により、永児たちは理不尽な仕打ちに遭うことになる。
【第九回「阿坂、ふてくされる」 2014年2月9日更新】
19/海ver7
20/ゴリラとラーメンver5
21/海辺の焚き火ver9
今回もっともすんなりと書けた3シーン。下関の海岸で過ごした子供時代を思い出して、とても懐かしい気持ちで書くことができた。
【第十回「永児、声を聞く」 2014年2月16日更新】
22/声の主ver10
23/サダクラ製薬の影ver24
せっかく不気味なシーンがあるので、怖い予告編を作ろうということになり、ヤハチがはりきった。怖いといっても、ちょっと恐ろしげな感じになるのかと思いきや、本気のホラーの予告が深夜にメールで届く。怖いものが大嫌いな星川は、自分の声で悲鳴をあげた。
この海岸沿いのシーン23では、永児と喜多見の会話には二十種類くらいのバージョンがあった。その中でも、最終的に選ばれたのはもっとも短いものである。
【第十一回「会長、みりん干しを焼く」 2014年2月23日更新】
24/一の矢ver34
25/飲むかver10
26/ASver19
27/カーテンの後ろver4
28/熱可塑性高分子材ver18
今回文句なしにもっとも手こずったパート。特にシーン24は数え切れないほどのバリエーションが生まれた。途中までは永児が先に金網を越え、金網越しに喜多見と会話をしていたが、配信三日前に最終的な形へと変更になる。その後も永児と喜多見の会話の内容は二転三転し、やっと確定したのは公開の一時間ほど前だった。
ちなみに、阿坂がシーン25へ至る過程を「五倉山中学日記」で描いているが、これは「どうしてこんなことになったんだろう?」という猫蔵とひらの疑問へ答えるためである。
【第十二回「阿坂、荷物持ちをする」 2014年3月9日更新】
29/二日酔いver11
30/アズミからの電話ver14
31/帰り道ver10
シーン29はシーン36よりもあとに書かれた。阿坂が思ったよりも峰の母親に同情的であることを知って、1シーンぐらいは母親と阿坂のシーンを書きたくなったためである。
【第十三回「花火大会、始まる」 2014年3月16日更新】
32/峰の絶望ver8
33/森を駆けるver7
34/ほかに頼みますver17
初稿では、シーン34で喜多見が「ほか」に頼む相手は、会長ではなく山田だった。しかし、どちらに喜多見が助けを求めるのか、最後の最後まで迷った結果、喜多見自身の意思に任せたところ、喜多見は迷うことなく会長に電話をした。作者にとっても、意外な一瞬だった。
【第十四回「会長、カフェオレを飲む」 2014年3月23日更新】
35/会長の休日ver8
36/花火大会開始ver8
37/コンコースver9
ここからのすべてのシーンは、喜多見が山田ではなく、会長を呼んだことから初稿を大きく逸脱して変わっていく。当初は会長はエピローグまで帰ってこない予定だったため、シーン9まで戻って、会長の帰り道の切符を早めに手配する必要もあった。
【第十五回「永児、全力疾走する」 2014年3月30日更新】
38/ホームの交錯ver12
39/電車の中ver10
40/弓月初陣ver17
41/アズミの見たものver14
42/笑い方ver15
ここの一連のシーンを書く直前、八王子に一日取材に行った。喜多見を豊田に向かわせたのはいいが、実はこの時はまだ、喜多見が豊田で何をするのかを決めていなかった。八王子の様子を見て回り、だいたいどこを舞台にするのかを決めたあと、上りの中央線に乗っている時に阿坂のシーンが浮かび、その後、豊田に降りた瞬間、たまたま目の前にこんなものを見付けて、その場で喜多見のシーンは決まった。
実際に豊田駅に行くと、おそらく喜多見がどこに立って、どこに向けて弓を引いたのかがはっきり分かると思う。アズミが走ったルートも、だいたい八王子駅内で再現できるはずだ。
【第十六回「喜多見、お見舞いに行く」 2014年4月6日更新】
43/川沿いのラーメンver12
44/峰の知らないことver10
45/お見舞いver9
46/プラモの作り方ver10
47/蘭静ver11
48/キツネとタヌキver13
49/narita ver7
43は公開の前の週に猫蔵によって付け足されたシーン。当初は永児と阿坂は橋の上で一緒に飲み物を飲むことになっていたが、猫蔵の「阿坂は本当はゴリララーメンを気に入っているな」という一言から最終版の形になった。
シーン44を書き始めた時点では、秋山が峰にあんな風に反応するとは考えていなかった。しかし、書いていると自然と秋山が怒って、峰に殴りかかったため、自分で動揺したのを覚えている。同じくシーン45でも、書いている時は峰の母親は永児のことに気が付いていないつもりだったが、永児が振り返った時、峰の母親が深々とお辞儀をしているのに戸惑った。峰の母親がどんなつもりであの礼をしたのかは、ぼくにもはっきりとは分からない。
シーン48は、実は五巻で最初に完成したシーンだった。当初はこれを五巻の冒頭に持ってくるつもりでいたが、結果的に展開の都合で、エピローグに回すことになる。個人的には今回一番気に入っているシーンのひとつだ。
**********
幻のシーン1を特別公開
片面PDFで読む(スマホなどに推奨)
見開きPDFで読む(パソコン・印刷に推奨)