【昭和20年代の「父」】イラストレーション:たかしまてつを
春の一ヶ月、ツイッターで連載をしていた「うちの親伝説・GHQ」が昨日、一旦終了しましたので、こちらのサイトにまとめさせていただきました。時間軸上では「うちの親伝説・GHQ」が一番古い時代となり、次に連載予定の「うちの親伝説・旅立」を経て、「うちの親伝説・渡米」に繋がる予定です。尚、「うちの親伝説・芋倉」は番外編となっています。
これらの物語はすべて九十の父の断片的な話や回顧録を繋ぎ合わせて、ぼくが独自に書き出したものです。人物・場所・会社の名前や、一部の細かいディテールなど、プライバシーのために変更してある部分もありますが、基本的にすべて実際の出来事です。いつも明るくて前向きで、何事にもくじけない父ですが、この時代のことだけは言葉を濁すことも多く、父の思いを少しでも汲み取れたら、という気持ちで書きました。
「人糞」「パンクしないタイヤ」「わずかな勉強時間」が宝物のように大切で、「スイカの苗を植えること」が許されない贅沢だった時代をぼくは知りません。でも、その時代に父が命がけで耕した土地に、今、自分が住んでいます。その時代に父が植えた苗から育った木陰で、今、暮らしています。父の話を聞いてから、はるか遠い時代をすぐ近くに感じるようになりました。毎日踏んでいるこの地面は、たくさんの人が踏み固めてくれたものだということを忘れないように生きていきたいと思います。
奇抜で突拍子もないことばかりの「うちの親」の人生ですが、今回ばかりはありきたりの物語です。戦後の日本にたくさんあった、苦しみと再生が同居していた時代の、ごくありふれた一青年の物語です。
【「芋倉」を掘る父】イラストレーション:たかしまてつを