パイポ

ビデオ借りに行かない?①

ここに一冊のノートがある。

覚悟して開くがいい。それは異界への入り口……

そう……The Video Libraryへの扉……

みなさまこんにちは。世にも不思議な・あなたの知らない・トワイライトストーリーの時間です。

今日はこちらのノートにまつわる不思議な話をご紹介しましょう。

遠い昔。現代のようなサブスクではなく、映像を「所有する」ことに意義があるとされる時代がありました。

何を言っているか分からない? それなら、あなたはずいぶんお若い。ネットで動画の配信が行われ、パソコンやスマホで好きな映像作品を——例えばそれが去年公開されたばかりのスパイダーマン最新作だったとしても——楽しめる、そんな時代は実はごく最近のことなのです。

さらに言えば、「何度でも」楽しめる。ここが重要です。今では、サブスク上では月額いくらでたくさんの作品が観られます。さらに新作などは有料でレンタルすることも可能です。

このレンタルした映画は、期限が切れたら観られなくなります。でも、再度数百円払えばまた見られます。しかし数十年前は、その一本を見るために映画館まで足を運ばなければならなかった。そして、一回見終わったらそれがその映画とのお別れ——以降はテレビでの奇跡的な再放送を待つ以外、二度とその映像を見ることは叶わなかったのです。例えそれが何年後のことであったとしても。

しかしその流れが大きく変わったのは一九八○年頃。ビデオが我々の生活に入り込んだ時でした。この発明によって、テレビで流れた映像をビデオテープに録画できるようになり、映画を複数回見る、という体験が可能になったのです。さらにはこのビデオを「レンタル」するという概念も飛び出し、私の地元でも「キングスロード」という名のビデオショップが隆盛を極めました。(ビデオショップの名前はなんかこういういかついのが多かった)

そんな中、人々は新たな事実に気がつき始めます。ビデオテープにはテレビに流れた映像を記録することができる……それなら、ビデオデッキが二台あれば、レンタルしたビデオも私物のテープに録画できるのではないか?

悪魔の発想。同時にそれは我々が到達したセンセーショナルな現実でもありました。この手段を用いれば、あらゆる映画を我が家に持つことができる。何度でも好きな作品を楽しむという夢が叶う時がきたのです。

こうして、一部の人々が映像作品に抱いていたただならぬ妄執が実現することになりました。自分の愛する作品をテープに取って保管し、いつでも何度でも観る。まさに映画をこの手に持っている感覚に酔いしれたと言ってもいいでしょう。

その結果が、こちらのノートです。ある人物の執念がそこに刻み込まれています。

ほら……

……お分かり頂けたでしょうか。

ここにあるのは、かつてその人物と彼の周囲の団体(という名の○ージとヤ○ソー)が観た映画の英語題・邦題/年代/録画したビデオテープの番号/映像の状態/作品の評価などなどを書き込んだ、それこそ趣味の結集のノートです。けっこうこんな感じで何ページも続くので、この辺にしておきましょう。ですがその執念、妄念のかけらは感じて頂けたかと思います。

お年頃の方は少し、思い出すこともあったかもしれません。その昔、レンタルショップに行くのは週末のルーティンでした。借りたビデオは、独特のシャワシャワするバッグに入っていました。新作や準新作は一本四百円とかで、大抵四本で千円……でも四本目まで見終わった試しがなく、一日返却が遅れて絶望……

この時代を知らない方には知って欲しい。かつて経験した方には、思い出してほしい。

ビデオは、確かにこの世にあったのです。

※ちなみに、ノートの右の方に「SCORE」という謎の数字が付いています。これについては、長くなりそうなので次回お話したいと思います。

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