パイポ

本日のワンパラ(10/01/20)

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「永久さんなら持っている」

 日本人なら誰でも漢字の読み間違いや誤解で恥をかいたことが一度や二度はあると思う。でも、ぼくはことさらこの分野ではひどい実績の持ち主だ。
「破綻」を「はじょう」と読むのなんて朝飯前で、長年「なだれ」を「雪崩」ではなく「崩雪」と書いてきたり、「月極駐車場」を「月極(げっきょく)」という巨大な駐車場のチェーンだと思い込んだり、かなり恥ずかしい間違いをいっぱいしてきた。そんな中でも、人に話しても「いくらなんでもそれはないだろう」と言われ、ぼくのホラ話だと思われてしまうものがひとつある。あまりにも恥ずかしいので長年ワンパラでは封印してきたが、いい加減時効だと思うので、書いてみることにした。

 ぼくは中学の頃、ある時代劇の大ファンだった。ただ、時代が時代でまだ家にはビデオがなく、よほどメジャーなもの以外はムックも出ていなかったし、グッズなどは皆無だったので、いつもその番組の情報に飢えていた。そんな中、奇跡的にポスターブックが出ることになり、それはもう狂喜乱舞してその本の発売を心待ちにした。
 やっと手に入れたそのポスターブックの表紙には、こう書いてあった。
「永久保存版」
 ふつうならこれを読み間違える人などいないだろう。
 しかし、大変困ったことに、この番組の古くからのスタッフの中に「永久(ながひさ)さん」という人がいた。大ファンだったぼくは、当然スタッフの名前もほとんど記憶していたので、この表紙を見た時、とっさに永久さんの名前が浮かび、「ああ、永久さんが所蔵していたコレクションだったのか」と本気で思ってしまった。事実、永久さんは大変なベテランで、古くからテレビに関わっていたみたいだったので、なんの違和感もなく納得できるものがあった。なので、それからは毎日「永久さんありがとう」と思いながら、いつも「永久保存版」のポスター集を眺めた。
 ここまでならまだいいのだけど、何しろぼくは当時、小学生男子。知性はちょっと賢いバッタ程度しかなかったので、このあと、別のテレビ番組の本でまた「永久保存版」というフレーズを見かけ、「すげー。永久さん、これも集めてたんだ」と本気で思ってしまった。それどころか、よくよく見てみると永久さんは実にいろんなものを集めているようで、それからもしょちゅう永久さんのコレクションが目についた。——いつしかぼくの中で永久さんは世界一のコレクターのイメージにふくれ上がり、勝手に敷地面積10万坪ぐらいの邸宅に、美術館のように無数の貯蔵品がある様子を思い浮かべていた。
 その後、大人になるに従って、さすがに自分のあり得ない間違いに気がついたが、それでも数年間はずっと「驚異のコレクター・永久さん」の存在を信じ続けていた。今でも時々、どうしても見つからないレアアイテムをオークションなどで探している時、ふと「永久さんならもってるんだろうな」と思うことがある。そんな時は大邸宅で億万のアイテムに囲まれて、高らかに笑う「永久さん」の姿が鮮やかに脳裏を駆け巡るのだ。

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