パイポ

カレーにまつわる都市伝説

ある日、スーパーへ出かけた。

すでに夜のメニューは頭になった。カレーである。だが、いつもとはひと味違う。

今日は本気のカレーだ。そういう気持ちだった。

そもそも、一人暮らしだとそれほど力の入った料理は作らない。(あくまで私の場合)

カレーにしても、具材を放り込み、手頃なルーを入れて完成だ。十分食べられるし、炒める時間すら省略することもある。でも、時々は自分用のいい加減なカレーではなく、家族がいた頃に作っていた「本気カレー」を制作し、全力で味わいたいと思う。この日がたまたま、そういう日だった。

本気カレーは、まず薄切りの牛肉だ。別にアメリカ産とか、オーストラリア産とかでいい。こんなところで和牛にこだわらない。それが自分ルール。

野菜はじゃがいも、にんじん。タマネギはみじん切りをたくさん入れたいから、多めに買う。とは言え最近は、すでに炒めたたまねぎペーストを販売していることもあるから、そちらを使っても良い。

あとは……と、ここで場所移動。カレーの材料とは思えないが、フルーツを見に行く。バナナの束が安かったから、カゴへ。それから……と、キウイを一つ。え? カレーだよね? と、思ったあなた。我が家のカレーはこれが隠し味。バナナ一本と、キウイ一個の皮を剥き、野菜を煮るタイミングで一緒に入れて、形がなくなるまで火を通す。そんなの入れるの? とけっこう驚かれるけど、うそだと思って試して欲しい。辛さはあるのに、フルーティな味わいのカレーができあがる。できればはちみつも大さじ2くらい入れると、なお美味しい。

さて、材料は揃った。レジへ向かおうとして、一旦逡巡。カレールー、あったよな……?

記憶を辿ると、前回使ったやつが半分残っているはず。冷蔵庫にも、使い差しがちょっとあった。うん。1回分はあるな——と、思ってから考え直した。

昭和の時代、どういうわけかカレールーは「二種類混ぜると美味しい」という都市伝説みたいなものがはびこっていた。特にどれとどれ、という規定はなく、とにかく複数入れるのがキモなのだとのことだった。私も、実際その方が美味しいような気がしていた。(※現在はルーの箱の表示通りに作るのがいちばん美味しいという説も濃厚である)三つ子の魂百まで。本気カレーを作るために、私は最終的にカレールーを一つカゴに入れた。私が選ぶのは、たいてい緑色をした中辛の箱だ。甘口の赤箱、辛口の黄箱にもそそられはするが、ここは保守派で。用意は万全。

そういえば緑・赤・黄色って信号機カラーだよな。でも赤が甘口って変じゃない? そもそも危険を示す色じゃないの??

などと、どうでもいいことを考えながら会計。即帰宅し、カレー作りを始めようとした時。

ルーの複数混ぜのため、引き出しに入っていた残りのカレールーと、冷蔵庫のかけらのカレールーと、今日買ってきたカレールーを出してみた。

全部同じ、こ○まろであった。

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