パイポ

La Dimensione Nascosta -Kaori Miyayama-

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秋模様のミラノよりお知らせです。


現在、北イタリアの小都市ヴァラッロポンビアの絵画館 Villa Soranzoにて宮山香里の個展”La Dimensione Nascosta -かくれた次元-“が開催中。古い歴史建造物の3つの部屋に3種のインスタレーションを展開しています。不便な場所ではありますが、ティチーノ川やマッジョーレ湖の自然が美しい地域です。



11月5日16:30には出版社と評論家によるカタログのプレゼンテーションも予定しています。展示の模様は少しずつこちらで更新中。

ときどきのぞいてみてください。
La Dimensione Nascosta



同時開催中の展示としては、6月4日から始まったヴェネツィアビエンナーレのイタリア館/若手展示が10月31日に閉幕を迎えます。


詳細はこちらからどうぞ。

ほたるの群れ 日常編「五倉山中学日記」連載開始!

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もうひとつの「ほたるの群れ」が十一月から連載開始!

小説ではページ数の関係で描ききれない永児たちの日常の様子を、本編と並行して追う初の試み! 永児と会長のぐだぐだの会話が⋯⋯喜多見と裕美のおしゃべりが⋯⋯阿坂が普段何をしているのかが、全部明るみに出る四コママンガ連載!



番外編やスピンオフではありません! 作者がすべてのディテールを書いているため、本編と矛盾はしません。イラストを描くのはもちろん本編と同じ平山けいこ。

3年6組のほかの生徒も出て来ます。本編の裏で起きていた出来事も登場します。サプライズいっぱいの内容はまだ秘密!



表があるからこそ、裏がある。

誰も見たことのない、もうひとつの「ほたるの群れ」が今、始まる!



連載は幻冬舎webマガジンで隔週連載。完全無料なので、どなたでもこちらから読んでいただけます。連載開始は11月1日。もうすぐ!
更新の際はこちらのサイト、あるいはスタジオのtwitterアカウントよりお知らせします。

どうぞ御期待下さい!


ほたるの群れサイト2.0へバージョンアップ!

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本日10月12日、「ほたるの群れ2」の発売日です。

これを記念して「ほたるの群れ 公式サイト」もバージョン2にリニューアルしました! 細かいところで色々新しい仕掛けが登場していますが、一番の目玉は「資料室」の誕生です。これは五倉山中学校にスタッフがこっそり潜り込んで、実際に学校内にあったプリントなどを持ち帰ってきてアップロードしたページです。アップしてある資料は自由にダウンロードして印刷も可能。校内の地図をはじめ、体育館にあったメモ用紙、そして七月の給食献立表などが今回の目玉です。

これからもどんどん増えていきますが、ただの無意味なプリントだと思うなかれ! よく見ると、あるいは本編の謎を解く重要な手がかりになるものもあるかも。ヒントはいずれtwitterで! ぜひstudio_etceteraのアカウントをフォローお願いします。(フォローはコラム右の「フォロー」ボタンから)



追伸:

まもなく「もうひとつの」ほたるの群れの「新連載」が始まりそうです。びっくりするような発表があるかもしれませんので、月末まで時々ここをチェックしてくださいね! 



本日のワンパラ(11/10/6)

MOBSバナー

「長くて楽しい夢」

 二十五年前。1984年、某アメリカの田舎町。——今ではつぶれてしまった古いショッピングモールの片隅。

 まだ雪が少し残る寒い日の午後、今では名前も忘れてしまったコンピューターショップの前で、ぼくはじっと窓ガラスに貼り付いていた。すでに三十分以上外で待っていたので、手はかじかんで、息が白かったが、それでも気持ちはこれ以上ないほど高揚していた。

 当時小学校六年生のぼくは、数年前に「apple II」というコンピュータに魅せられて以来、来る日も来る日もコンピュータのことばかり考えていた。もちろん、高価なコンピュータが買えるはずもなく、暇を見つけては近くの図書館のコンピューター室に遊びに行ったり、町唯一のコンピューターショップに展示されているapple IIを触りに行った。店長のおじさんとはすっかり仲良くなって、店が閉まってからでも、しばらくapple IIをいじらせてもらえることもあった。

 冬のある日、いつものようにapple IIで他愛もないゲームをプレイしていると、ひげ面の店長がニヤニヤしながらぼくに話しかけてきた。

「すごいものを見たくないか?」

 新しいゲームでもあるのかと思って、ぼくは目を輝かせながら店長にうなずいた。すると店長は「明日うちの店にマッキントッシュが来るんだ」と誇らしげに言った。

「マッキントッシュ?」

 お菓子か何かだと思った。

「アップルの新しいコンピュータだ。すごいんだぞ。明日の三時頃に店に届くから、見に来いよ」

 店長があまりに思わせぶりに言うので、おかげでその夜はあまり眠ることができなかった。「すごい」と言われても、どんなものかさっぱり分からないので、妄想することすらできず、悶々と次の日の学校を過ごした。当然、学校から帰った瞬間に自転車にまたがって、そのまま店まで飛んでいったのだが、その「すごいもの」は到着が遅れていた。

 大らかな時代だったので、店長が「すごいもの」を取りに出る間、店は一時的に閉まっていた。仕方なく、ぼくは窓の前で待つことにした。

 そろそろ戻らないと母親に怒られるかと心配になり始めた頃、暗かった店の中に電気が灯って、奥のドアから店長が大きな荷物を抱えて入ってくるのが見えた。口をぽっかり開けたぼくが、ショーウィンドウに貼り付いているのを見つけると、店長は苦笑して、とりあえず入口の鍵を開けてくれた。まともなコートも羽織っていないぼくを見て、店長は「あったかいレモネードでも飲むか?」と言ってくれたが、ぼくはそんなことより、店の真ん中に置かれた箱が気になって仕方がなかった。

「わかったわかった、今開ける」と言って、店長はもったいぶりながら箱からきれいに梱包された「マッキントッシュ」を取り出し始めた。それは想像していたよりもはるかに小さくて、不思議な形をした物体で、およそコンピュータには見えなかった。店長は本体を店の真ん中の展示用の丸テーブルに置くと、続いて箱の中からキーボードを取り出し、それをぼくに見せてにやりと笑ってみせた。たぶんその頃には、ぼくは餌をもらう犬のように、息が荒くなっていたと思う。

 しかし、荒くなった息は、店長が箱の中から見たことのない四角い小さな装置を取り出したところで逆にぴたりと止まった。胸がドキドキしていた。こめかみの辺りに血が流れているのが分かって、なぜか涙が出て来そうな感覚があった。——きっとこれから、ぼくはすごいものを見ることになる。なぜかそんな予感がした。

 店長が電源を入れると、いつもの黒いモニタにカーソルが現れるのを待った。しかし、現れたのはカーソルではなく、矢印だった。画面の真ん中で矢印が動き回っていた。そして、それは驚くべき事にテーブルの上で動いている店長の手とぴったり連動していた。

 体中に鳥肌が立った。店長が矢印を使って、メニューを開く。あ然として見守っていると、さらに画面の矢印は鉛筆のような形に変化して、信じられないことに、画面の中に「どうだい? 驚いたか?」という文字が手書きで現れた。言葉すら出せないぼくに、たたみかけるように店長はキーボードで画面に文字を打ち込んで、また矢印で何かをいじる。次の瞬間、コンピュータがぼくに音声で話しかけてきた。

「やあ。こんにちわ。ぼくがマッキントッシュだよ」

 思わず「こんにちわ」とぼくもまじめに挨拶を返すと、店長は大きな声で笑った。すでに夕方だったが、もはや帰ることなどできるはずもなく、その日はあたりまえに閉店まで店にいたので、帰宅したあと、母親から烈火の如く叱られた。

 その日以来、マッキントッシュに取り憑かれて、ほぼ毎日その店に通いつめることになった。二冊あったマッキントッシュのパンフレットのうちの一冊を無理言って店長にもらったので、家に帰ったあともずっとパンフレットを眺め続けた。薄いパンフレットだったので、折れないようにいつも二枚のダンボール紙の間に挟んで持ち歩いて、決して誰にも見せなかった。一人で部屋のベッドに潜り込んで、飽きることなく何時間でもパンフレットの写真を眺めたりして、ずいぶん親を心配させたりもした。

 当時のコンピューターにできることは限られていたけど、それでもまるで未来を触っているように面白かった。コンピュータはまだ生まれたばかりだったけど、ぼくたちも似たようなものだった。これから、この機械がどんどんすごくなっていく未来をぼくは大人として生きて行けるんだ、と思うと、心から幸せだった。

 翌年、日本に戻ってもマックのことが忘れられなかった。当時、日本にもわずかにマックが輸入され始めた時期ではあったが、その値段は気が遠くなるようなもので、雑誌の片隅にある小さな広告の数字にはいつも0が六つ以上並んでいた。中学生になって、小遣いが1000円上がった程度では、到底手の届くようなシロモノではなかった。

 それでも執念のようにマックを求め続けて、18歳の時、初めて近くの書店で使っていたmacintosh classicの中古を格安で譲り受けることに成功した。初めてそれが家に届いた夜は、比喩とかではなく、文字通りマックを抱いて寝た。

 あれから二十年以上——。そのマックは今もまだ家の書庫にある。電源を入れれば、「漢字Talk6」が現役で動くのが自慢だ。そのほかに、家にはマックが三台ある。そのうちのひとつで、この文章を打っている。マックはすっかりぼくの日常の一部になったが、今でもふいに「わー、今ぼくはマックを使ってるんだ。すごいな」と思う時がある。きっとあの日、窓の前で震えながら待っていたまだ見ぬ「すごいもの」を、今でも待ち続けている気持ちがどこかに残っているからだと思う。

 アップルの新製品の基調講演が始まる直前は、ぼくはいつもあの窓の前で待っている少年に戻る。ワクワクして、未来に思いを馳せて、自分の鼓動が耳の奥から聞こえてくる。そんな時、人生は楽しく、明日は今日よりも明るく見える。

 実はあの時のパンフレットを倉庫から取り出してきて、今、眺めながらこれを書いている。この三十年、長く楽しい夢を見せてくれたアップルの創始者、スティーブ・ジョブスが今朝、亡くなったからだ。

 今頃、きっとこれと良く似た文章が世界中で書かれているのではないかと思う。ぼくと同じように窓の前で待っていた少年たちが、世界中にいっぱいいるはずだから。——次のone more thingがもうないと分かっていても、これからもぼくらはきっとどこかでそれを待ち続けると思う。

 ミスタージョブス、三十年間、目が回るほど楽しい思いをさせてくれてありがとう。あなたがかじって、ぼくらに渡してくれた禁断の実は、それはそれは魅力的なものでした。

 Stay hungry, stay foolish ——。

 さよなら。偉大な先生。




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(ボロボロになってしまった大切なパンフレット)

ほたるの群れ2 10月12日発売!

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この秋、「ほたるの群れシリーズ」待望の第二弾がついに登場!

奇跡的に一度は「会」の襲撃を免れた永児と喜多見の命を狙って、最強の暗殺者「字(あざな)」の魔の手が迫る。市内から多くの生徒や保護者が集まる合唱コンクール当日、無数の人込みに紛れて校内に忍び込んだ「字」を、永児たちは先に見つけることができるのか!?

100ページ以上の大幅増ページに加え、五倉山中学の校内図などの資料集も収録したシリーズ第二弾! 幻冬舎文庫より、定価630円で10月12日に発売です!



amazonよりの購入はこちらから。





(同時に当サイトのBOOKSのコーナー、「ほたるの群れ2」のデータを追加更新しました。)

ほたるの群れ・次回予告

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ほたるの群れ アニメPV絶賛公開中

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