パイポ

夏の終わりに! 「ほたるの群れ5 希(こいねがう)」〜再掲〜

さがしものはなんですか〜?

それは……ほたる5のpdfです!!

と、いうところで、申し訳ありません。猫蔵です。実は以前よりお問い合わせを頂いておりました、「ほたるの群れ」五巻。こちらのスタジオサイトで連載され、そこでのみ読むことができた奇跡の一冊ですが、そちらのpdfのリンクが……切れている……とのことで……

データどこだろう? とPCを探してみたものの見つからず、ここしばらくの捜索作業。倉庫にまで手を伸ばし、HDが入っている箱を開けたり閉めたり、やけに重い段ボールを発見したらドクターペッパーが24本入っていたり、HDの中身がすべて猫の写真だったり……

いろんなことがありました。捨てる物は捨て、分かりやすくしました。ラベルも貼りました。

その結果:スタジオがきれいになりました。(ただの大掃除)

……と、いうのは冗談です。時間がかかりましたが、ようやく、ようやく発見致しました!! 本当に灯台もと暗しというか、向山本人のPCの隅の隅に、なんかしらん「〜〜all_v2」みたいな名前で入ってました!! わからんて!! 

そういう感じで、お待たせしてしまいました。

夏の終わりにふさわしい「ほたるの群れ5 希(こいねがう)」再upです!!

どうぞどうぞ、お楽しみ頂けたら幸いです……!!

ほたるの群れ5 希(こいねがう)」作:向山貴彦 絵:平山けいこ

私も確認がてら久しぶりに読んでます! みなさんのところではうまくみれるかな……ドキドキ。

ソースにまつわる話

八月になりました。

いわゆる猛暑という奴をモロにくらい、最高気温39度の町で若干ゲル状になりながら、久しぶりにパソコンに向かっています。猫蔵です。

思えば八月は向山の季節でした。唯一似合う花であるひまわり(※個人の感想です)を背負い、花火、お祭り、仲間とワイワイ……もしかしたら、奴は今で言う「ぱりぴ」というやつだったのではないかという疑いさえ湧いてきます。とは言え、楽しい思い出がたくさんあるのも事実で、花火動画を眺めながら(※この付近では開催がないため)懐かしい気分を盛り上げております。

そんな楽しい夏の日々。そこにいつも寄り添ってくれる食べものがありました。

そうめん? かき氷? いえいえ、違います。食べ物と言うより、味付けと言った方が正しいかもしれません。

この味がしたら、夏の味。それは……。

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ソースにまつわる話 文:向山貴彦

今、昼ご飯にとんかつを食べていてふと思った。このかけているブルドッグのとんかつソース。味も容器もぼくが小学生の頃からほとんど変わっていない。コンビニでは新製品のほうが既製品よりも多く並んでいる昨今、三十年以上、何も変わらずに同じであることは、もうそれだけでよほどの価値があるのではないかと思う。 

このソースのボトルは思えば、三十年、ぼくの人生の至るところに登場している。 

子供の頃、我が家では親がウスターソース派で、とんかつソースというのを使ったことがなかった。ところが小学校に上がったぼくが給食でとんかつソースを食べて感激したことにより、向山家にはじめてとんかつソースという文化が流入した。以降、とんかつソース派とウスターソース派の二派に別れた我が家は、フライものの日、絶えず激しい言い争いになった。 

トンカツソースを教えてくれた小学校の給食。 

コロッケとかフライ(主にくじら)の日には給食室からとんかつソースがまるまる一本上がってくる。これを順番に回して、少しずつかけていくのだ。しかし、目盛りや目安があるわけではないから、公平感などポケモンの糞にも満たない小学生のやること――当然、最初の方の子供は多くかけ、最後の方の子供は涙を呑むことになる。しかも、席が固定されていたクラスではいつも得をするやつと損をするやつが決まっていて、理不尽極まりない制度だった。 

昭和というのはそういうアバウトなことが平気でまかりとおる時代で、ガキ大将っぽいやつは先にソースを奪って大量にかけ、いじめられっ子はソースなしでコロッケを食べていた。しかも、本人たちも、周りの連中も、先生すらも、それがあたりまえだと思っていたふしがある。世の中というのはそういうものだった。ソースをたくさんかけられる子供になりたかったら、強くなるしかなかったのだ。 

小学校高学年の時にはこのソースをめぐって問題が起きた。 

例によって、ソースをフライングゲットしようとした体育会系のFくんがクラスの中でも一番発言力のある女子、Tさんの順番に割り込んでソースを奪ったため、一気にソースボトルのつかみ合いが勃発した。 

激闘の最中、哀れソースボトルはキャップがはじけ、ソースの大半が床にこぼれた。この時点でソースをすでに使用していた子はわずかに一列。大半の子はソースが宙を舞った瞬間、その日の自分のカツはそのまま食べることになるのを悟った。いきなり泣き始める女子あり、Fくんと殴り合いになる男子あり、一列目のソースを奪おうとする者あり、床のソースをすくおうとするものあり、もう一瞬で教室内は阿鼻叫喚である。先生がかけつけて騒動を収めるまで、クラスは一時期配給を受け損なった難民キャンプの様相を呈した。 

十代の後半、入院した時には塩分制限を受けて、ソースを使うことができない時期が一年ぐらいあった。ぼくの入院していた病院の患者は大半が塩分制限を受けているのに、なぜか売店では堂々とソースが売られていて、それをこっそり買ってベッド脇の棚に隠している入院患者があとを絶たなかった。時々、看護師に持ち物チェックされている人までいた。さながら麻薬取調官のように、看護師のお姉さんが棚の中を調べ尽くし、ソースや醤油などを没収している光景があっちこっちで見られた。 

ぼくは自分でこそ「密輸」をしなかったが、となりのおじさんにソースを分けてもらったことは何度かあった。ぼくらの間では禁断の味だったそのソースのことを、看護師にばれないように、当時ぼくらは「ブツ」と読んで、隠語で取引をしていた。「ブツ」一回分と引き替えに、ぼくは家から送ってもらったチョコボールをよくおじさんに横流しした。 

東京で一人暮らしを始めてからはしばらくソースが家にない暮らしが続いた。何しろとんかつソースを使うような料理を作ることなど皆無である。そういったものは外で食べるので、家にソースを置いておく必要がなかった。あるのはせいぜいほかほか弁当で余分についていたソースのパックぐらいのものだった。 

二十代後半になって、再び自分で料理を作ろうと考えた頃、久しぶりにスーパーでソースを買った時のことを覚えている。おそらく上京してから、初めて買ったソースだと思う。関東にもまったく同じブランドのものが売っていることにちょっと喜んだ記憶がある。 

台所の戸棚にソースのびんが置いてあると、なんとなく落ち着く。ちゃんと生活をしているのだという気がしてくる。醤油や味噌、砂糖や塩はさすがにふつうにあった。マヨネーズなども案外買っていた。ただ、ソースだけはなんとなく余裕がなければ買わない調味料だったように思う。とんかつソースの横に、さらにウスターソースが並んだ日には、やっと人間らしい生活に自分が戻れたことを実感した日であった。 

今、こうしてソースをかけながらそんなことをふと考えた。 

もし、毎年のようにソースの味やパッケージが変わっていたら、こんなように記憶に残っていただろうか。 

同じものが同じ風景の中にある。 

あたりまえにあるものが、あるべきところにある。 

その価値が分かるようになるまで、このソースが変わらぬ姿で存在してくれていたことをただありがたく思いながら、今、とんかつを食べている。

7/15書籍版「金網の向こう」ついに発売!!

とびきり嬉しいお知らせです。

かねてよりお伝えしていた「金網の向こう」の書籍版。

発売が、もう目前です!!

こんな感じの、一冊です!!

ハードカバーで、96ページ。小さめサイズの、ノスタルジックな一冊に仕上がりました。

内側にはたかしまてつを氏による、Twitter非公開の描き下ろしイラスト数点(この絵すごい好きです!)に加えて、懇意の恩師夫妻である巽孝之先生+小谷真理氏による愛にあふれた巻末エッセイまで収録!!

大人の事情で原文からカットor編文になった表現についても、ぜひご確認ください!!

少年テディの戦いが書店で幕を開けるのは、7月15日です!!(地域により発売日が前後することがあります、ご了承くださいませ)

ご予約はこちらから!

角川春樹事務所 「金網の向こう ぼくは米軍基地にある小学校に一年間通った」

たくさんの方に、届きますように。

愛を込めて

ネコゾー

いい知らせ、の前の日本地理。

前回、「金網の向こう」書籍化のお知らせをしたところですが、

それから数日の時が経ち……

そろそろ、もうちょっと。

具体的な知らせが……できるんじゃない?

と、その前に。箸休め的に、こんなのんびりワンパラはいかがでしょうか。

日本の都道府県。大人のみなさん、いくつ確実に言えますか?

うちのスタジオ代表、米軍基地の学校に通った男は、こんな感じです。

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人に言えない日本地理 文:向山貴彦

「名古屋県ってどこにあるんだっけ?」

ぼくが実際にスタッフにした質問である。しかも、これはほんの数年前のことだ。あまりにも周りの連中が引いているので、さては39にもなって「名古屋県」の場所すら分からないのかとあきれられているのだろうと思って、「日本の地理は弱いんだよ」とまで付け足したが、みんな顔を見合わせるだけで、表情が凍り付いていた。一番若い女の子は何か珍しい生き物が部屋に入ってきたような顔でずっとこっちを見ている。ぼくはちょっとむっとして、「名古屋県だよ、名古屋県。何? 誰も知らないの?」と繰り返した。

また、こんなこともあった。

「北海道って県付けるんだっけ?」

こんなのもあった。

「奈良って京都のどのへん?」

これはもう少し若い時だけど、聞いた人には強烈な印象だったらしい。

「四国って九州だっけ?」

どうもギャグで言っていると思われることもあるようだが、誓って言うが、その時にはマジで聞いていたものだ。今日もねこぞうに「餃子の宇都宮市って何県だっけ?」と聞かれて、ためらうことなく「埼玉だろ。おれ、行ったことあるし」と答えたばかりだ。行けるものなら行って見ろよ、埼玉の宇都宮市、と自分に強く突っ込んでおきたい。

そう。ぼくは日本地理が極めて苦手だ。本州の最南端、九州まで5分っていうところで十数年育ったのに、九州の県がつい最近まで「福岡」と「長崎」しか分からなかった。それも両方位置は間違えていた。あと、「別府」という県があった気がしたが、さっき地図で確認したら存在しなかった。たぶんこの「大分」か「宮崎」というのがそれに当たるのではないかと思う。

そんなわけで、いったい自分がどのくらい日本地図を把握しているのか試すために、ネットにある「日本地図ゲーム」をやってみることにした。これは県の形に区切った白地図に、それぞれ正しい県名を書き込んでいくというシンプルなものだ。なんだかんだ言っても、ぼくももうすぐ四十歳。案外、パーフェクトを出してしまうんじゃないかと内心なめてかかっていた。

まずは出身県の山口を書く。余裕だ。でも、さっそくここでちょっと首をひねった。

「山口」のとなりはずっと「広島」だけだと思っていたのだが、地図をよく見ると、何か上にも県があることに気がついた。この県の名前がいくら考えても思い出せない。――いや、いくらなんでもとなりの県である。きっとど忘れしているだけで、答えを見れば「あーあー」と思うだろうとタカをくくっていたが、見てみたら「島根県」。まったく思い当たらない名前だった。大学の時に山形県出身の「島根」というやつがいたが、あれはたぶんなんの関係もないのだろう。

奥さんの出身であるため、何度も行っている四国はさすがに自信を持って書いた。なめるなよ。これでもカーナビだけでいつも車で四国まで行ってるんだから。そう思って答え合わせしたところ、なんと四県を四県ともずらして間違えるという、逆に狙ってもできそうもない間違え方に成功していた。というか、そもそも香川県を「高松県」と書いていた。

関東はもう住んで十数年。しかも成人してからの十数年で、その間、何万キロも車で運転している場所だ。さすがに余裕だろうと思って、県名を埋めていった。東京、神奈川、千葉。少し迷ったけど、中央線の先にあるのだから左の奴が山梨。上はよく通っていた埼玉。おお、順調じゃないかと自分に誇らしく思いながら、何やら上の方にもう三県並んでいることに気がついた。なんだこれは? 関東って、ほかにも県あったっけ? と、その三件に住んでいる方に失礼なのを承知で思った。いや、待てよ。これのうちのひとつって妹が住んでる茨城だろ。そう気がついた。たしか茨城に車で行った時は高速で二時間ほどかかった。所沢は下の道で一時間弱ぐらいだから、だいたいその倍ぐらいの距離にあるはず。でも、どれだ? そしてほかの二つは? もしかして千葉ってもっと上だったか? 電車で二時間半ぐらいと聞いていた静岡も怪しい。そういえば仙台も新幹線ならすぐって聞いてたし、寒いっていうから上の方じゃないのか? 待てよ。仙台って県だっけ? 仙台県? なんか聞いた覚えがない名前だな。だとしたら何県だ?

迷った末に、その三県は左から大学の合宿で行った「長野」、妹の住んでいる「茨城」、そして昔友達が住んでいた「群馬」と書いて答え合わせした。ねこぞうから「バカ? もしかしてバカ?」と聞かれた。

しかし、ここまではまだよかった。これからがいよいよ怪しい。

関西、甲信越、東北。

まず正直に告白しよう。今まで何度もその単語を口にしたり、話題に出た時には相槌を打ってきたが、ぼくは本当のところ、「甲信越地方」が何か分かっていない。場所が分からないのではない。「何か」分からないのだ。もしかしたらフィクションに出てくる場所かもしれない。あるいはいずれかの県の江戸時代の呼び名である可能性もある。たぶん……たぶんだが、きっと関西と関東の間のよくわからないごちゃごちゃしたあたりのどっかだとは思うのだが、もしかしたら山か何かの名前かもしれない。下手したら「甲信越県」の可能性も視野に入れて、今まで三十九年間ごまかしてきた。なので、このあたりの地理は絶望的だ。

おまけに関西も自信がない。ほとんど行ったことがない上に、「名古屋県」が未だにどこにあるか分からない。だいたいの県の名前は言える。「大阪」「京都」「奈良」「和歌山」そして「名古屋が入っている県」だ。もしかしたら全部関西じゃないかもしれないけれど、まあ、ぼく的には関西だ。問題はどれがどこにあるのか皆目検討がつかないことだ。よく下関に帰郷する時に新幹線でこれらの駅を通過するので、漠然と並んでいる順番は分かっている。問題は、新幹線の線路がどう通っているのかがさっぱり分からない事だ。まさかそんなに大回りはしないだろうという推理で、下半分に順番に知っている県を書き入れていったのだが、結果、全滅。静岡県の存在をとばしていたことも致命傷だった。

最後の東北地方はもはや見当がつかない。自信を持って記入したのは北海道ただひとつ。(正直、これも書きながら間違っていたらどうしようかと思っていた。)秋田と青森はどこかにあるはずだ。福島っていうのもあったと思う。問題は仙台が県かどうかだ。なんとか全部書き終わったが、日本海側の県はほとんど真っ白のまま。しょうがないので、いくつか件名を発明して埋めておいた。そんなわけでぼくの住む日本は、北側が「崎陽県」「開高県」「北斗百裂県」「ペガサス流星県」など大変カラフルな地方となった。

答え合わせボタンがあるので、おもむろに押してみると47都道府県中、正解が12県。奥さんの出身県を間違えている上、父方の故郷の山梨、母方の奈良、そして妹が現在在住している茨城も間違えるという逆パーフェクトの凄まじい成績。自分が実際に長期間住んでいた「山口」「東京」「神奈川」と、三葉虫でも間違えないと思われる「沖縄」「北海道」を除き、なんと正解したのは7県だけ。しかも7つのうち半分は当てずっぽうかラッキーで当たったもので、ひとつは漢字を間違えていた。福井県に関してはお住まいの方には大変申し訳ないのだが、生まれて初めて聞いた名前のような気がしてならない。

さすがにこれには自分でも危機感を持ったので、その後、地図帳と三時間にらめっこして、やっと全部の県の位置を覚えた。その際にいくつか驚くべき発見をしたので、それをここに羅列してこのワンパラを終わりたい。

・大阪が思ったより小さかった

・三重県の県庁所在地の名前が誤植かと思った

・正直、愛知県よりも名古屋県の方が覚えやすい気がする

・崎陽県は悪くない名前だと思う

・実は東京も最初場所を間違えかけていた

・島根、福井などの県にお住まいのみなさま、不幸のメールとか送ってこないでください。すみません、反省してます。

・たぶん一月もあれば、また大半は忘れると思う

「金網の向こう」書籍化です!

雨の多い時期ですが、うれしいおしらせです。

たかしまてつを氏がTwitterで連載してくださった、向山貴彦によるエッセイ「金網の向こう」が、書籍化になります!! わーい!!

……実の所、しばらく更新が滞っていたのもこの作業のためであったりします。でも、みなさまの応援と、スタッフ、編集の方々のおかげで、他にない一冊ができたのでは……と思っております。

米軍基地という特殊な状況と、その中に紛れ込んだ日本の小学四年生の絵物語。

発売日、その他の情報は後ほど解禁になるかと思うので、今しばしお待ちくださいませ。

どうぞよろしくお願い致します!

梅雨の合間に

ネコゾー

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